荻窪さん達が帰ってからも、また私達はいろいろ話をした。趣味の話、皆さんの生い立ち。
どれもこれも、新鮮なことばかり。中央線は毎日乗っている電車なのに…私は凄く色々なものを見過ごして来たんだな…。
そこへ、車掌さんがやってきて私に向かって言った。
「私も、大変名残惜しいのですが、もうすぐ終電の時間です。お嬢さん。」
「え?!終電?」
自分の腕時計を見ると時計の針はてっぺんを廻っていた。
「きゃぁ!どうしよう!帰らなくちゃ!」
「ええ?もう帰っちゃうの?ほらー、ラーメンなんかの話してるから時間無くなっちゃうんだよ!」
「そうですね…わたくしともまだ全然お話が足りませんよ。」
「くっそー、あのガキどもが来なけりゃ、まだまだ趣味の話ができたのによー!」
「俺のかわいい子猫ちゃん。すぐにまた俺の膝に帰ってくるだろ?」
「こら!彼女を私物化するな…でも…また、来て…下さいますよね…。」
「一人でかっこつけちゃって。東京ちゃん顔まっかだよ。」
「コラッ!」
騒ぐみんなの間をわって車掌さんが何かを私の手に握らせた。
「本日はおつき合いくださって有難うございました。」
もらったものはカード。
「え?noruca?」
SuicaのようなICカードだ。
「また、ミラクル☆トレインにいらっしゃるときは、この『noruca』で自動改札を通って下さい。そうすれば、この列車は貴女の許に参ります。」
「また来いよな。」
耳許で囁いた新宿さんが顔を寄せ、私の頬にキスをした。
「きゃ!」
「新宿!何をする!」
新宿さんから奪い取るように私は、東京さんの腕に抱かれた。
「大丈夫ですか?お嬢さん。」
「あ…だ…大丈夫です!(ほんとは大丈夫じゃないけど!)…また来ます!」
「こら!抜け駆けすんなー。」
「東京さんが一番美味しいじゃないですかー!」
「…」
私は顔を真っ赤にして、ドアからかけ降りた。
ドアの向こうから、また来てねという皆の声が遠のいて行く。
「はぁ〜。」
下を向いて、ため息をつくと、周りの騒音が耳にはいってきた。
「東京方面行き最終電車が参ります…。」
人のざわめきが聞こえる。
これは…夢だったの?私、倒れていた訳じゃ無いよね?
でも現実に、手の中には一枚の銀色のカードがあった。noruca。
あの素敵な人たちに、また逢えるのだろうか…。
今日の素敵な思い出と、これからの素敵だろう出来事に私の胸はどきどきしていた。
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「可愛いかったね〜。僕あんな彼女が欲しいよ〜。」
「吉祥寺、お前にはまだ千年早い。あの子猫ちゃんは俺のもんだ。」
「とても素敵な方でしたね。わたくしも次に来て下さるのが楽しみです。今度はわたくしを指名して下されば良いのですが…。」
「立川にはやらねーよ。俺が深いところまで連れてってやるのさ。」
「中野さんの深いところはアブないからダメだよ。僕とオシャレデートのほうが彼女には似合うもん…あれ?東京さんどうしたの?遠い目しちゃって。」
「…え、あ、いや…なんでもない…。」
「なに?もしかしてマジ惚れ?」
「うるさいっ!中野!」
「東京ちゃんには俺がいるじゃないか。」
「彼女をお前と同じにするな!」
車掌が彼等にむかってアナウンスする。
「またあの素敵なお嬢さんにお逢したいのなら、皆さんも、イイ男になるように精進しなさい!…それでは、出発、進行!」
ミラクル☆トレインは貴女の乗車を待ちながら走り続けています。