「貴女は何がお好きなんですか。」

「そうだよー。キミの事、僕も知りたい!」

「ん〜なんだろう。」

話は好きな食べ物の話。

東京さんの好物は駅弁!日本で一番駅弁があるから、だって。しらなかった。でもそれって楽しそう!
新宿さんは花園饅頭。ちょっと意外!甘いもの好き?でも日本一高いお饅頭っていうのが、なんだかバブリーな新宿さんぽいかも。
吉祥寺クンはメンチカツ。駅前にすごくおいしいメンチカツやさんがあるんだって!
立川さんはクリスピークリームドーナツだって!美味しいから私も大好き。新宿さんに影響されてハマったんだとか。でもちょっとカロリーが気になるかな(笑)
中野さんはラーメン!なんだか似合い過ぎ!


「青葉のラーメンは最高だぜ。ダブルスープの元祖なんだ!」

あ、青葉って聴いた事ある。でも

「ダブルスープって?」

「ダブルスープっていうのは、動物系のダシと魚介系のダシを併せたものさ。最近はいろんなところで食べられるけど、元祖は中野、オレんとこの青葉なんだ。」

「そうなんですか。聴いたとはあったけど、私、あんまりラーメンって食べないから分からなくて…。」

「ラーメンを食べない?邪道だな。」

聴き慣れない声がまた違う車両から聞こえて来た。

「お前は!」

振り向くと2人の男性が立っていた。兄弟?またしてもイケメン。ホントに、ミラクルな電車っ。

「荻窪、お前がなんで出てくんだよっ。」

「通りかかっただけさ。そこの…、ラーメンに興味ない…?」

「はぁ…興味ないっていうか。あまり食べないだけなんですけど…。」

「俺はそういう女に興味ない。お前もそうだろう、西荻窪。」

は?

「いや、僕はそうでもないけど?兄さんがこだわりすぎなんだよ。どうも初めまして西荻窪です。こっちが兄の荻窪です。」

「また面倒くさいのがでてきたな。」ため息まじりに新宿さんが言う。

「ラーメン食べないのって、そんなにおかしいことですか?」女の子でひとりでラーメン屋さんってなかなか入りづらいじゃない?食べたくても食べられないっていうか…

「ぜーんぜん。僕もあんまり、食べないよ。だってカロリーとか気になるでしょ?」

あ、確かにそれも気になるけど。さすがお洒落に気をつかってる吉祥寺クンだなぁ。

「吉祥寺、お前も分かってない。」

「分かんなくっていいよ。もう西荻窪、お前の兄さんつれて帰ってくれよ。」

「あ、待って、吉祥寺君。私も吉祥寺君も何が分かってないんですか?」

「えーっとね、兄さんが御迷惑かけちゃってごめんね。荻窪系っていうか荻窪ラーメンって知ってる?」黙り込んでしまった荻窪さんの代わりに、西荻窪さんが答えてくれた。

「荻窪ラーメン?」聴いた事、あるような、無いような…。

「ふん、興味がないなら、知らなくていい!…行くぞ、西荻窪。」

「興味ないなんて、そんなことはないです。私、ここに来てから知らない事だらけで。毎日中央線にのっているのに、恥ずかしいっていうか、こんなに沢山面白い事があるんだって凄く思ったんです。…よかったら、教えてもらえませんか?」

「お嬢さん、無理しなくていいんですよ。」

東京さんがフォローしてくれるけど…

「本当に知りたいって思ったんです。だって、私、みなさんの事、知りたいのに、知らない事だらけで。」


「し…知りたいなら、お…教えてやってもいいけどな。」


え?なんでそこで、どもっちゃうのかな?荻窪さん。ちょっとコワいイメージだったけど、教えてくれるって事は、そうでもないのかも。弟さんの西荻窪さんは凄く穏やかだなぁ。性格は違うけど、あ、やっぱり兄弟だからか、なんだか二人、顔も似てる〜。


「…こら!聴いてるのか?!」

「きゃ!すっすみません。ちゃんと聴いてませんでした!」

しまった荻窪さんと、西荻窪さんの顔に見とれてて聞き逃しちゃった!自分から聞きたいって言っておいて、ヤバい〜。

「もう、兄さんっ。もう少し可愛い女の子には優しくしないと駄目だよ。」

「いいか、中野の言うダブルスープは魚介スープがあってこそはじめて出来たスープ。荻窪ラーメンは、その元祖にあたる魚介系のスープを扱っている。」

「魚介なのは、お蕎麦やさんからラーメン屋さんに転身した人が多いからって理由らしいですよ。」

「へぇ。全然知らなかった…。」

「ふん、だから言ったろう、興味ない女には、俺も興味ない。」

「でも、凄く面白かったです!教えてくれてありがとうございます!荻窪ラーメンかぁ。お蕎麦やさんだから魚介スープなんて、ホント日本的で面白い!」

「…まぁ、ちょっとは興味がわいたようだな。しかし、食べた事もなくて、好きも嫌いも言う資格はお前にはないな。」

「いえっ、きらいとかじゃなくて、食べる機会が今迄なかったってだけで…。」

「…。じゃぁお前…。」荻窪さんが私に凄むように言った。

「はい?」

「…絶対食いに来い!!奢ってやる。来てから判断しろっ。食わないと、いいも悪いも判断できないだろう!」

「あ、はい…わかりました。」

「で?」

「はい?」

「で、…いつ…いつ来るつもりだ?」

「え?あ、それはもちろん近い内に!」

「…絶対だからな!約束しだぞ!」

すると返事をする前に、荻窪さんは踵を返して走り去っていった。

「すみません兄の荻窪が。でも、僕、西荻窪のところも、ラーメン以外にもいろいろあって、楽しいですよ。遊びに来て下さい。」

西荻窪さんも軽くおじぎをして一緒に次の車両に行ってしまった。



「まったく青いな。耳迄赤かったぞ荻窪は。見ているこっちが恥ずかしい。」新宿さんが仕方ないという風にため息をつきながら言った。

「ホーント。結局来て欲しいんじゃん!ラーメン知らない位で文句言うなって言うの!しかも僕達にはぜーんぜん奢ってくれたりしないのにさ!勝手にデートの約束迄とりつけちゃってるし、とんだダークホースだよ。」

「ちなみに…わたくしの所にはうどラーメンというのがありますが。」

「げ!なにそれ。ゲテ系?」中野さんが吃驚して立川さんに聴く。

「とんでもない。うどは、わたくしの特産物ですからね。日本の3割シェアをわたくしがもっているんです。そのうどを使った御当地ラーメンですよ。」

うどが立川さんの特産品?それもしらなかったけど、ラーメンにうど?なんだか想像できないな…。

「是非、食べにいらしてください。わたくしも奢りますよ。」

「あっきったねー。立川抜け駆けすんな!ラーメンっていったら、オレんとこだってーの。もともとダブルスープの話から始まったんだろうが。」

「そんなこといっていて良いのかな、中野。俺様
新宿のところは全てのラーメンが揃っているぜ。」

「もーラ−メンの話はいいよ!時間のムダだよ。」

「そうだ、ラーメンも結構だが、ほかにも有意義な話があるだろう。」

「有意義な話?」

「少しでも多く私達について、もっとお嬢さん、貴女に知ってもらいたいんですよ。」

言いながら、ちらりと銀時計に目をやる、東京さんのメガネ越しの瞳が少しだけ寂しそうに見えた。

そういえば、今何時なんだろう…。
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次回は6月15日更新!おたのしみに!